森博嗣著「面白いとは何か? 面白く生きるには?」から考える、エンタメを作ることの難しさ

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世界中のクリエイターやエンターテイナーが、往年の数学者の如く両指を合わせて毎日のように考えている問題がある。
「面白い」とは何か
今回はこの問題を、「面白いとは何か? 面白く生きるには?(ワニブックスPLUS新書 著:森博嗣)」の視点を借りて考えていく。

まずは本書の一部分をピックアップして、森氏の考える「面白さ」について見ていこう。

面白いのレシピは存在しない

設計図さえされば、ものを作ることは可能だ。しかし、面白さを知っている人でも、そういった設計図が描けるわけではないのである。

引用元:森博嗣(2019)『面白いとは何か? 面白く生きるには?』株式会社ワニブックス(14ページ)

出版業界では、応募作や新人作家が売れるかどうかの目利きが出来る編集者をカリスマ編集者と呼んでいるらしい。その「面白さ」を誰よりも知っているカリスマ編集者でも、「面白さ」が足りない理由を具体的に説明することが出来ていない現状が、本書にて語られている。

近年流行っている「面白さ」は「共感」

その気持ちが自分にはよく理解できる、というような意味で「共感」という言葉がとてもメジャになった。感動するものは、すべて「共感」だといいきっている人もいるくらい、これが流行っているようだ。 
おそらく、ネット社会になって現れたものだろう。(中略)そう、僕はそれは幻想だと思っている。

引用元:森博嗣(2019)『面白いとは何か? 面白く生きるには?』株式会社ワニブックス(44ページ)

大衆はどんなものを「面白い」と感じるのか。森氏は、この問題に明確な答えは存在しないと語った上で、ひとつの傾向を挙げている。それが「共感」である。つまり、「みんなが面白ければ、面白い」と感じる人がネット社会になって多くなったと、森氏は言っているのだ。
こうなった現代社会で溢れかえるのが、「宣伝によって作られた面白さ」だ、とも述べられている。昨今の作る側が考えるのは、純粋な「面白さ」ではなく、「多くの人に評価されるもの」になっているのである。

面白いから評価するのではなく、評価されているから面白い、という発想で大衆は「面白い」を感じようとする、ということだろうか。

「面白さ」は最終的には満足につながるものである

「面白さ」に対する反応でも、いろいろある。
可笑しい「面白さ」は笑う、吹き出す、にやけるなどの反応があるが、意外性の「面白さ」に対しては、笑うというよりは、あっけにとられる、呆然とするような反応になる(中略)
さまざまな「面白さ」があって、それに対する最初の反応は異なっているが、最終的にはなんらかの満足が得られる、という共通点がある。「面白い」とは、すなわち「満足できる」ことだからだ。

引用元:森博嗣(2019)『面白いとは何か? 面白く生きるには?』株式会社ワニブックス(62ページ)

文や絵、音楽、あるいは人やその思考であったり、人それぞれ「面白い」と感じるものは違う。そのすべてに共通しているのが、最後には満足感を得る、ということなのだと森氏は語っている。

いうなれば、いずれ自分は満足するぞ、という予感が、その人を笑顔にさせるのである。

引用元:森博嗣(2019)『面白いとは何か? 面白く生きるには?』株式会社ワニブックス(64ページ)

いずれ自分は満足する予感というのは、どういう時に感じるものだろう。
おそらく、自らが求めているものがその先にあると確信した時などが、それに該当するのではないだろうか。
これは世のクリエイターが「面白さ」を考える上では、忘れてはならないことのように思う。

「面白い」を作りたい人も、そうでない人も本書はおすすめ

今回は本書のほんの一部分を抜粋して、森氏の言う「面白い」に触れた。
森氏は本書で「面白いは何か」という問題の明確な答えはないとしながらも、さまざまな視点、傾向から「面白さ」を追求している。例えば、「ほのぼの」からくる「面白さ」であったり、「アクション」からくる「面白さ」であったり、その切り口は多岐に渡るものになっていた。

また、本書の後半は「人生を面白くするには?」というテーマで書かれている。こちらも非常に興味深い内容になっていた。

簡単にたくさんの人と繋がることができる時代になったからこそ、森氏のような冷静で本質を突いた視点が「面白い人生」を考える上では役に立つかもしれない。

ゲームプランナーからシナリオライターになり活動をしている私にとっては、「面白いとは何か?」は永遠の問いである。抽象的でかつ、流動的なこの問題の答えが欲しいと思うなら、本書のように様々な視点から編み物を編んでいくように考えを重ねていくほかないのだと、私は思う。

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